結婚相談所の開業に興味がある理由は人それぞれですが、誰も失敗したいと思って始める人はいません。IBJによると「IBJの事業継続率は97%(※2020年から2022年に開業した2,501社のうち)」(出典:IBJが選ばれる理由)ですが、廃業したり休眠状態になったりしないようにするには、どうすればよいでしょうか。
結婚相談所の運営で重要な要素として、「集客」と「交際サポート」があります。また、個人で開業するとしても、結婚相談所は事業を「経営」することに他なりません。

今回は、結婚相談所を開業して失敗する主な原因について、「集客」「交際サポート」「経営」の3つの観点で解説します。
1. 集客
(1) 集客の難しさ
結婚相談所を開業して、最初の大きな関門は集客です。
日本結婚相談所連盟(IBJ)に加盟すれば、会員ネットワークもシステムも初日から使うことができます。加盟店は「自社の会員を集めてサポートする」ことだけをすれば良いという恵まれた環境を手にすることができます。
しかし、ほとんどの新規加盟店は、その「自社の会員を集める」ことで非常に苦労します。それは、新規加盟して、初期の研修の大部分が「集客」関連であることからも明らかです。
さて、IBJのホームページでは、モデルケースとして以下が提示されています。
①副業・週末起業で開業した場合 | 新規入会1名/月 (1名×10万円=10万円) 活動会員20名 (20名×1万円=20万円) お見合い20回/月 (20回×5千円=10万円) 成婚0.5名/月 (0.5名×20万円=10万円) | 月間売上50万円 年間売上600万円 |
②脱サラ・個人事業主で開業した場合 | 新規入会2名/月 (2名×10万円=20万円) 活動会員50名 (50名×1万円=50万円) お見合い50回/月 (50回×5千円=25万円) 成婚1名/月 (0.5名×20万円=10万円) | 月間売上115万円 年間売上1,380万円 |
③法人事業で開業した場合 | 新規入会13名/月 (13名×10万円=130万円) 活動会員300名 (300名×1万円=300万円) お見合い300回/月 (300回×5千円=150万円) 成婚6名/月 (6名×20万円=120万円) | 月間売上700万円 年間売上8,400万円 |
感覚値として、これが達成できているのは、新規加盟店のうち2割あるかどうかだと思います。加盟して1年経っても、会員が数名程度という結婚相談所も少なくありません。
「①副業・週末起業で開業した場合」で、会員数20名、新規入会毎月1名となっていますが、この時点でかなり難易度が高いです。まして、「②脱サラ・個人事業主で開業した場合」の会員数50名、新規入会毎月2名というのは、先輩仲人研修の講師として呼ばれるような成功者レベルです。
結婚相談所は、加盟店が急激に増えていることで二極化の傾向にあり、一部の加盟店に人気が集中しています。そういう結婚相談所は、集客にまったく困らず、逆に入会を停止せざるを得ないような状況で、「成功しているところがますます成功する」と言えるような状況にあります。
マクロ的には、すでに人口減少社会に突入しており、婚姻数も減少傾向にあります。それでも、婚活市場自体は当面は拡大することが見込まれています。
一方で、日本結婚相談所連盟(IBJ)では、現在3,883社(2023年6月)ある加盟店を、2027年までに1万社に増やす計画を発表しています。1万社まで増やせるかどうかは別にして、今よりはるかに加盟店が増えることは間違いありません。
そうしたなかで、新規の加盟店が安定して会員を獲得していくのは、並大抵の努力ではできません。にもかかわらず、前述のモデルケースや成功例の話を聞くことはあっても、失敗例はなかなか聞くことができないため、なぜか「自分もそのぐらいできるだろう」と安易に考えてしまい、「集客」を真剣に考えずに開業してしまう人が多いと言えます。
そのため、この結婚相談所開業ガイドでは、失敗の可能性もあることをあえて指摘したうえで、それでも開業したいと思うかどうかの判断材料にしていただければと考えています。いい話ばかり聞いて加盟した結果、後で後悔するようなことになってほしくないのです。
(2) 集客の方法
この記事を読んでくださっている方は、結婚相談所の開業を検討中の方だと思います。あなたが開業したら、会員をどのように募集する予定でしょうか。先に進む前に、少し考えてみてください。
シンキング・タイム
さて、あなたの「集客プラン」はどんな内容でしょうか。
私の集客プランは、⋯⋯
個別にお話を伺いたいところですが、ここでは、一般的に行われている主な集客方法について解説します。
結婚相談所の集客方法
①知人紹介営業
②提携
③会員からの紹介
④オンライン集客(ホームページ、SNS、広告等)
⑤オフライン集客(チラシ、イベント開催等)
①知人紹介営業
IBJに新規加盟すると、まずは「知人紹介営業」をやるように勧められます。そのための研修もあり、その研修自体はよく考えられたもので参考になります。
しかし、人によっては、結婚につながりそうな知人友人があまりいなかったり、そういう営業が得意でない人もいます。アラサーの方であれば、結婚適齢期の知人友人が多く、比較的紹介を得られやすいかもしれませんが、やはり人によります。
知人友人が多い人でも、開業前は「入会する」とか「誰か紹介する」と言ってくれていたのに、実際に開業したら全然入会につながらないというのもよく聞く話です。もちろん、本当にすぐに入会につながって、開業早々会員10数名という方もいらっしゃいます。ですので、過信は禁物というお話です。
②提携
他社との「提携」もあります。エステや美容サロン、自治体や地元の有力企業等、婚活と親和性のある組織は多々あります。地元の商工会等の経済団体に入って、ネットワークをうまく活用されている方もいらっしゃいます。そうしたネットワークをお持ちだったり、営業が得意な方にはお勧めです。
③会員からの紹介
文字どおりですが、これでよくあるのは、成婚退会した会員さんからの紹介です。成婚できた会員さんは、普通はそのカウンセラーさんに感謝をしています。自分がうまくいったことで、友人知人を紹介してくれるわけですが、当たり前ながら、まずは会員がいないとこの紹介は発生しないため、新規加盟店には使えない方法です。
「成功している結婚相談所がますます成功する」理由の1つはここにあります。強力かつ安定的な紹介源ですが、そこにたどり着くまでが課題と言えます。
④オンライン集客
比較的年齢が高めの方にとっては、苦手意識のある分野だと思いますが、集客を考えるうえでは決して避けられない方法です。なぜなら、SNSも広告もやらず、前述の知人紹介営業だけをやる場合でも、必ず「ホームページ教えて」と言われるからです。
そのときに、ホームページがなかったり、あったとしても適当なものだったりしたら、来るものも来なくなってしまいます。例えば、近くで良さそうな美容院や病院を見つけたとして、予約する前に、まずはホームページを見るのではないでしょうか。結婚相談所も同じことです。
したがって、ホームページだけは、まず優先的に完成させる必要があります。しかし、闇雲にホームページを作っても、絶対に成果につながりません。オンライン集客を有効に行うためには、戦略が必要です。これについては、別途解説したいと思います。
さて、日本結婚相談所連盟(IBJ)では、ホームページ制作会社の「あきばれ」と提携していて、加盟のタイミングや条件によっては、最初の制作は無料でしてもらえますが、それがいいかどうかよく考える必要があります。
また、マーケティング支援や制作代行を行なっている会社も多数ありますが、それもよく考えたほうが良いです。自分で作成したらSEO対策ができないから駄目だと言われますが、結婚相談所のホームページぐらいであれば、ツールを使えば自分で作れますし、SEOについてもしっかり勉強しておいたほうが長期的には良いと思います。
私自身は、最初はあきばれで作成しましたが、先日、ようやく新しいサイトに移行することができました。100%自力で作成したため、デザインは改善の余地ありですが、以前のものより格段に見やすく、使いやすくなりました。実際、アクセスの状況も改善しています。
あきばれから移行した最大の理由は、あきばれには「ブログ」機能がなく、ブログの投稿にものすごく苦労し、しかも苦労したのに見栄えが悪いため、すぐに離脱されてしまうという悲しい状況だったからです。そのため、出来るだけ早く移行したかったのですが、時間がかかってしまいました。
途中で移行するのは本当に大変です。外注したら相当の費用がかかりますし、自分でやる場合は、労力がかかります。ホームページをどこで作るかは、慎重にお考えください。



ブログをどこで書くかも「よくある質問」ですが、私のお勧めは以下のとおりです。
①メインは、自社ホームページに設置
②それをIBJのエリアページ(加盟店用のページで、無料でブログの投稿が可能)に流用し、自社ホームページに誘導する。
オンライン集客は、ホームページやブログ以外にも多々あり、非常に重要なので、別途まとめる予定です。
こうしたことを、開業してから考え始めるのでは遅すぎます。お金に余裕があるのであれば別ですが、開業は、それ自体が絶好の宣伝の機会で二度目はありません。
サービスの開始に向けて見込み客の獲得をしていくことを、マーケティング用語では「プロダクトローンチ」と言いますが、開業前にいかに準備するかで大きな差が生まれます。
私自身は、プロダクトローンチを行うことができず、本当にもったいないことをしたと思っています。だからこそ、これから加盟される方には、同じ過ちを犯していただきたくなく、こうして発信しています。
私がサイトリニューアルした方法についても「ホームページ作成ガイド」として別途作成する予定です。



結婚相談所の開業に向けて、ホームページ作成やプロダクトローンチ等の集客方法にご興味がある方は、以下のボタンからご登録ください。適宜有益な情報をお送りいたします。
⑤オフライン集客
昨今は、あまり一般的ではありませんが、オフラインによる集客方法もあります。婚活イベントを開催したり、チラシを作成してポスティングしたり、近隣の店舗に置かせてもらったりという方法です。
私自身は、チラシ等はまったく行なっていません。他社でもやってみたけど効果がなかったという方が多いですが、一部得意な方は、それなりに成果を出されているようです。
オフラインのイベントも、イベントの集客と準備に苦労する割に成果につながらないという方が多いですが、これも人によりそうです。本業がイベント関連であれば、やってみる価値はあると思います。
2. 交際サポート
(1) マインドセット
前章では、開業する側の視点でお話ししましたが、逆に自分が婚活する側だったとして考えると、副業・週末起業でやっているところに、積極的に入りたいと思えるでしょうか。
考えてもみてください。自分が会員だったとして、
- 平日夜に組まれたお見合いでトラブルがあり、カウンセラーに連絡しようと思ったら残業で連絡がつかない。
- 交際のことで、お相手のカウンセラーが自分のカウンセラーと連絡を取ろうとしたが、日中は連絡がつかず大事な情報を教えてもらうのが遅れて、交際に悪影響が出た。
こんなことがあったら、そのカウンセラーのことをどう思うでしょうか。
だからと言って、副業・週末起業が駄目だと言いたいわけではありません。私自身、副業でスタートしましたし、副業でしっかり成果を出し、責任をもって取り組まれている方も大勢いいらっしゃいます。
ここでお伝えしたいのは、結婚相談所は、会員の方の「結婚」をサポートする仕事であり、人生を左右する責任のある仕事だということです。個人個人の婚活のサポートが必要であり、決して「手離れ」がいい仕事ではありません。
その意味で、「楽してお金儲けできそう」という理由で安易に開業しても、集客は簡単ではないですし、サポートが疎かになり、会員は成婚できず、離れていってしまいます。
きちんと対価を得ることは重要ですし可能ですが、会員の方の幸せを実現したいという熱意がないと、やっていけない仕事だと思います。
(2) サポートスキル
会員の方の結婚をサポートする「熱意」があったとして、それでは、その「スキル」はどうでしょうか。
最近は、結婚相談所で婚活した方の開業事例も増えてきました。そういう方であれば、婚活市場の「経験者」として、未経験の方よりは有利かもしれません。しかし、その経験は、「あなたの」経験であり、しっかりと一般化する必要があります。
婚活市場も世間に合わせて流行や変化があります。自分への戒めを込めて言いますが、老害と言われないよう、自分の経験に固執しすぎず、時代の変化に合わせて学び続ける姿勢が大事だと思います。
そして何より、あなたの目の前にいる会員の方をよく見ることが大切です。
ここでいう「サポートスキル」は多岐に渡ります。
プロフィールの作成
身だしなみのアドバイス
お見合いの設定(場所の選定、予約)
交際のアドバイス
これ以外にも多々ありますが、IBJには、それぞれ個性を活かした加盟店がたくさんあります。「プロフィール作成」や「外見」のアドバイスを売りにしていたり、「再婚専門」や「男性専門」「看護師専門」といったように対象別に特化していたり様々です。
これらは、集客にも直結します。別の言い方をするとブランディングとも言いますが、自分の強みを発揮した特色あるサポートを行い、集客にもつなげられるように考えてみてください。
(3) 「幸せな結婚」のサポート
婚活のサポートには、婚活特有の知識が必要なことに加えて、私は、会員の方が「幸せな結婚」ができるようサポートすることが使命だと考えています。
そのために、私は「ポジティブ心理学コーチ」としての経験や、大手企業で「ウェルビーイング経営」を推進してきた経験を婚活サポートにも活かしています。
「ウェルビーイング」とは、「身体的、精神的、社会的に良い状態である」ことを表す言葉であり、「ポジティブ心理学」とは「幸せに生きる方法を科学的に研究する学問」です。最近、日本でも注目されるようになってきたので、聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
結婚相談所を開業するのであれば、まずは自らが幸せであり、夫婦関係も良好であることが好ましいですが(夫婦関係が劣悪なカウンセラーにサポートしてほしいとは、普通の人はあまり思いません)、ポジティブ心理学は、婚活や夫婦関係の改善にも大変効果的です。
こんな経験をしたことはないでしょうか。
- 自分の欠点ばかり気になって、自己肯定感が低い。
- 自分のことはさておき、他人(パートナー)の悪口ばかり言ってしまう。
- パートナーがしてくれたことよりも、してくれないことに腹が立ち、結果的に夫婦関係が更に悪化する。
そんなあなたに、ポジティブ心理学はパラダイムシフトを起こしてくれます。私は2017年からポジティブ心理学を学び、実践してきていますが、そのおかげで、夫婦関係も極めて良好です。
そこで、より多くの結婚相談所に、ポジティブ心理学を応用した婚活サポートを行なってほしいなと思っています。



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3. 経営スキル
副業で始めるにしても、個人事業主で始めるにしても、結婚相談所は「事業」であり、加盟店になるということは、その事業の「経営」を行うということになります。
経営として、その事業を行う意義(ミッションやパーパス)を考え、ビジョンを定め、「経営戦略」を考えるということです。こうした全体の方向性を考えないまま、その場しのぎの対応をしていたのでは、事業を成長させることは難しいと言わざるを得ません。
また、実務的なことで言えば、例えばこんなことが挙げられます。
- 連盟に加盟するための「契約書」締結
- 税務署への「開業届」提出
- 法人を設立する場合、法人登記の手続き
- 「税務申告書」の作成・提出
- 会員に入会してもらうための「契約書」等の整備
- 支払いを受け取るための「決済」手段の整備
- 各種営業への対応 等
起業が初めてであれば、やったことがないことが多いかもしれませんが、基本的な事務手続きとなります。
余談ですが、ホームページを公開したら、いろんなところから営業されます。「やった、問い合わせが来た」と思ったら営業だったというのは「開業あるある」ですが、まともに対応していると意外に時間を取られてしまいます。
また、広告掲載の営業やホームページ制作代行、マーケティング支援(SEO、MEO等)の営業も多いです。そういうときに、集客ができていないことに焦って、あまりよくわからないまま契約してしまい、後で後悔したという話もよく聞きます。
そうしたことも含めて、すべて自分が責任を負うということになります。それが、事業を行うことの楽しさでもあり、難しさでもあります。経験したことがないと不安だと思いますが、慣れ(=経験)の問題です。
致命的な間違いだけはしないように、大胆かつ細心にやっていくことが求められます。
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